2010/11/18

セミトラ展 ウェブから生まれるデザイン

SemitransParent Designは以前この記事を読んで、気になっていました。
ここで紹介されている「tFont/fTime」というテーマはとても興味深い。

今回、このテーマが表現された2作品が東京に来るということで、
セミトラ展 ウェブから生まれるデザイン」に行ってきました。



「tFont」(時間軸を持ったフォント)を表現した「No Flash Photography Allowed」は
一見でたらめな光の運動や点滅に見える映像が、実は文字の軌跡を描写していて
シャッタースピードを落として撮影することで初めて読むことができるという作品。

肉眼だとさっぱり意味がわからないランダムな光の動きなんだけど、
なぜかじっと見入ってしまう。
ここから浮かび上がるキーワードとして
“規則の中の不規則”や“有意の中の無意”といった要素があるように思います。

不規則または無意味な表現が、実は見えない規則や意味で支配されている。
そんな状況が与えられたとき、人は見えない規則や意味を見いだそうとして
その表現に惹き付けられるのではないでしょうか。



「fTime」(フォントを持った時間軸)を表現した「Movable Type」は
ターンテーブル上のレコードを再生すると、レコードの劣化に伴い
スクリーンの文字もゆがみ、劣化していくという作品。

“再生”と“劣化”という要素を時間軸の象徴として捉え、本来劣化しないデジタルデータに
劣化を与えることでデジタルとアナログの中間的な存在を生み出しています。
そこにアナログレコードを介在させているのがまた秀逸。
レコードはデジタルデータとは対照的な存在であり、
それを再生することで劣化が起こる。
またレコードはスクラッチすることが可能であり、
これによって鑑賞者が作品に関与できる余地が生まれています。



“フォントと時間軸”というモチーフを起点に、対照的なアプローチをしている2作品ですが
それぞれの表現はまったく異なる要素によって支えられているのが面白いです。

この展示会に伴う、田中良治さんのインタビュー動画も必見。
YouTube - セミトランスペアレント・デザイン 「時間軸-ウェブとリアルの境界」